http://www.arsnote.com/arno/works/keiten02kiso1.html#hyougentai お騒がせします.更新は、しばらく続きます.形典の目次の表示も解りやすく変更中です.
■形典 ●形典の基礎概念/表現体 観ようとする対象を指す造語.
「表現体」とは,形態や形体を観る側が,何らかの表現として意識的に鑑賞し、解釈する場合の対象を指す造語です.
表現体とは,対象そのものと,連動して変化する表象を主観的に一体とみなした存在.
表現体の基底を成す自然形態が物質的にどのように形成されるかは,まだまだ明らかではない.しかし,その形成過程が解らずとも,人々は本能的に視野の中から形を把握し,シンメトリーなどの蓋然的な基準を踏まえて俊敏に記憶と照合・判別し,生存競争の只中を生き抜いてきた.学校では,形態の分類法を学ぶので,その差異を見分ける力は,体験以上のものとなっている.
もちろん,動物は,通常主観的に対象を表現体として見ている.対象が危険で恐ろしい存在か,捕食できる美味なる存在かなどを感情(本能や経験の記憶)を交えていつも見分けている.
たとえば,ライオンの画像やはく製は人を襲う存在ではないが,表現体としては恐怖の対象である.いかにも満腹そうな顔をしたライオンでも安心はできないが,赤ちゃんとなれば別である.
動物の表情やしぐさは,互いにリアルタイムな表現体そのものとして読み取られるので,強者のライオンといえども,抜き足,差し足,忍び足といった情報の隠蔽行動が常套手段となる.つまり,動物自身も他の動物にとってどの様な表現体であるのかを,本能的に認識しているようだ.
いのちは,こんな日常の食物連鎖から抜け出して,心のよりどころを探し出す時もある.すがすがしい空気,進化した美しい花々,甘い香り,心地の良い風音や鳥のさえずり,華麗なダンス.表現体は,不思議で楽しい芸術的な振る舞いも見せるのだ.彼らの澄んだ瞳.これはまさに不条理からの抜け道,大袈裟に言えば,次元を異にする,芸術情報によるワームホールなのかもしれない.
表現体の基底を成す自然形態が物質的にどのように形成されるかは,まだまだ明らかではない.しかし,その形成過程がわからずとも,人々は本能的に視野の中から形を把握し,シンメトリーなどの蓋然的な基準を踏まえて記憶との照合をしながら,個々の対象を判別し,認識し,生き抜いてきた.学校では,博物学的分類を学ぶので,その差異を見分ける力は,体験以上のものであるようだ.
表現体には,人為形態もあるわけだが,これには素材として命を絶たれた自然物が介在する場合が多い. その表現が物理・化学性に起因したものや,生命や生態に起因するもの等、博物学的形式に加え,いのちとこころの表現,ドラマチックな変容や,古来からの宗教観や普遍的な象徴性,哲学的な寓意,あるいは,何ものでもなく抽象化されたリズム感そのもの等々,多様な形式が形成され継承されている.
人為による表現体の形成プロセスを簡単に記すと以下のようになる.
外的対象→知覚した内的対象(知覚表象)→対象の構成・分類と解釈(記憶表象)→再構成されたイメージ(想像表象)→身体性あるいはその延長(道具,機械など)による概略の表現(素描,造形譜)→身体性あるいはその延長による具体物を使った実制作物→新たな外的対象としの表現体.